[眼科 東戸塚]
2024年08月20日
なぜ加齢黄斑変性になるの?
なぜ加齢黄斑変性(AMD)になるのでしょうか?なぜ加齢黄斑変性になる人とならない人に分かれるのでしょうか?今回は、加齢黄斑変性の発症原因とされている、ものを見るときに発生する酸化ストレスを軸に、これらの質問にお答えしてみたいと思います。
ものを見ているとき黄斑は酸化ストレスにさらされている
人がものを見るということは、目の中に入ってきた光が、視力を司る黄斑に焦点を結ぶということです。つまり、ものを見ている間は、常に黄斑に光が集中します。虫眼鏡で光を集めているのと同じです。黄斑の網膜は視力に関わる高代謝の部位であり、常にこの光による高い酸化ストレスにさらされています。
人には黄斑の酸化ストレスを解消する力がある
若い頃は、網膜を裏打ちしている網膜色素上皮(RPE)細胞が黄斑部の酸化ストレスを効率的に除去し、何重もの抗酸化防御機構を活性化することで、酸化ストレスから網膜を保護しています。
加齢とともに酸化ストレスを解消する力が低下する
しかし、加齢とともに、この防御機構は次第に衰えます。具体例としては、RPE細胞が光を受け取る視細胞の古くなった外節を正常に処理できなくなり、結果として、光による損傷が蓄積していきます。
喫煙も酸化ストレスを解消する力が低下させる
また、ライフスタイルが黄斑部の酸化ストレスを解消する力に影響します。代表的なのが、喫煙です。喫煙により、酸化ストレスに対する防御機構が低下し、黄斑に酸化ストレスが増加することが分かっています。他にも、肥満、高脂血症、過度な紫外線暴露などが黄斑の酸化ストレス防御機構を低下させます。加齢黄斑変性の発症に個人差がある理由の1つは、このライフスタイルの違いと言えます。
酸化ストレス防御機構は遺伝による個人差がある
同じようなライフスタイルでも、加齢黄斑変性になりやすい人と、なりにくい人がいます。これは、酸化ストレス防御機構の能力に遺伝による違いがあるためです。専門的には、「遺伝子多型」と言われている人の個性を形成する遺伝子のわずかな違いです。遺伝子検査で、加齢黄斑変性になりやすいかどうか調べることができるようになっています。
抗酸化食生活が加齢黄斑変性予防の鍵
ここまで読んで、酸化ストレスから黄斑を守る力が、加齢とライフスタイルと遺伝により低下して、結果的に黄斑部が酸化ストレスに対して脆弱になり、加齢黄斑変性になりやすくなることがご理解いただけたかと思います。加齢と遺伝は変えることができませんが、ライフスタイルは変えることができます。禁煙する、抗酸化作用を持つ栄養素が豊富な野菜・果物や魚介類を十分に食する、そして加齢黄斑変性予防のエビデンスのある抗酸化サプリメントを摂取することで、AMDの発症を予防したり、進行を遅らせることができるのです。